システムはなぜ高いの?(可用性ってなに?:初級編)

 久々にユーザー様向けの御話を一つ。
 と同時におなじような技術者の立場の方にもこういった説明を「ちゃんと顧客にしましょう」という思いを込めてひとつ。
 システムの価格の高さにインフラ(サーバーとか)があります。
 多くのお客様に「システムのご提案」をした際にやはり皆さん一番気になるのが「価格」の部分です。
 しばしば「パソコンが5万6万の時代になぜ数百万、数千万のコストが出てくるんだ?」という御質問を頂戴します。
 よく「まあ人件費がかかっても、こんな簡単なシステムなら100万位でさっとできないの?」という質問も頂戴します。
 では、その理由の一つである、インフラ(サーバーとか)についてお話します。
 まずパソコンが5-6万の時代に・・・という点で比較してみましょう。サーバーでもPCサーバーやそもそもパソコン用のPCにサーバーOSを入れて使用すれば5-6万で済みます。
 ではなぜ、そういう提案をSI企業は持ってこないのでしょう?
 メーカーならともかく、SI企業にとって高いマシンが売れたところで大したメリットはありません。業界の通例的には利益率は5%やそれ以下、あるいは「素通し」でハードウェアの見積もりを提出しているところが大半です。
 それなのになぜでしょう?
・・・本文に続く
 


 まず第一に「動かしっぱなし」にする前提で作られているか否かです。
 発熱や電源回り、ハードディスクなどそういった部分が24時間365日稼働する前提で作られていないのがパソコンです。
 サーバーとして作られているマシンにはメーカーの設計から耐久テストまでそういった稼働を前提にしています。
 実はそれでも、最低限度のマシン機能は10万程度で手に入ります。
 その10万に今度は、サーバーには「サポート」がつきます。
 パソコンはメーカー修理保証が1年ついていますが、たいていのサーバーには「3年オンサイトサポート」などがついています。
 つまり、故障した場合には会社にあるコピー機などのようにサービスマンが来て直してくれます。
 たとえお店で買ったパソコンに延長保証のようなものを付けても、修理に来てくれるわけではありません。「センドバック」といってメーカーに送付し、帰ってくるのを待たなければいけません。
 ある日会社に出勤したら「会社のシステムがサーバーがメーカー修理なので今月は伝票作成から営業データまですべて紙でお願いします」という場面を想像するのはかなり難しいですよね?
 たとえば「お昼までに治ります」であれば、皆さん納得できるのではないでしょうか。
 朝9時にサーバーが壊れてお昼まで・・・とすると時間にして3時間。せいぜい4時間です。
 主要なメーカーの4時間オンサイトサポート(※4時間以内に治るという意味ではなく駆けつけるです)はだいたい20-40万程度はします。(※もとのサーバーによります。)
 これで本体が十万円でもいっきに30-50万です。
 さて、さらにサーバーで一番故障しやすい部分は何でしょう?
 ハードディスクです。この部品はその重要性にもかかわらず非常に破損しやすい部品です。1台のサーバーで年間に複数回破損することもあります。
 電源やハードディスクといった「動作する部分、モーターの稼働する部分」は自然界の法則における「摩擦」がある以上必ず破損する可能性があります。
 人類はまだこの問題を少なくとも低コストでは解決できていません。
 「年に何度かサービスマン待ち」のシステムも明らかに問題です。
 が、それ以上に恐ろしいのは、ハードディスクが破損するとデータが喪失する恐れがあります。
 朝止まっていた「システム」(正確にはサーバー)が昼に復旧したがデータが全部消えていた」という想像ができるでしょうか?
 経理が1年間入力したデータが。営業が1年間入力した取引の情報がまったくのゼロになってしまいます。
 え?バックアップを取っていなかったのかと?
 ・・・現在ハードディスクは低価格化が進みいまやテラバイトのハードディスクが個人用のPCに入ります。
 当然サーバーのハードディスクも大きくなり、勢いシステムもデータの取扱量を増やしてきました。
 便利なようにデータ項目を増やしたりもそうですが、内部統制的な理由から作業したログを保管したりもよく見かけます。
 システムを構成するミドルウェアやOSも大きくなっています。
 結果、もちろんバックアップをしますが、テープにしろDVDにしろメディアバックアップは取得も復旧も大変な時間がかかるようになってしまっています。
 1日がかりでとる例も珍しくありません。
 そのそもテープやDVDにとるのであればそういった装置も必要ですが、それ以上に誰かがテープやDVDを交換する作業が必要になってしまいます。
 人件費という観点で見ると簡単に数百万のコストになってしまいます。
 いずれにせよ「1時間ごとにとる」などは無理でしょう。
 というわけで、1日一回その作業をしたとして「バックアップは1日一回ですので1日分のデータが全部消えました」と言われたら?
 たとえば一日分の出荷データがごっそり消えたら?経理が締め日に作業していてのアルバイトの給料データが消えたら?支払いを誰までしたかわからなくなったら?
 タイミングよく一番忙しいときにサーバーは破損します。
 それは負荷が一番大きい状況なので一番破損の可能性も高い状態なのです。
 ではそれを防ぐ方法は?ハードディスクにはミラーやストライピングといった「RAID」(レイド)と言われる技術が使われています。
 簡単にいえば、同じデータを物理的に別れた別のハードディスクに持つことによりたとえ故障してもデータの喪失が防ぐことができるようになります。
 この技術を採用したサーバーを購入するとハードディスクも当然複数台必要なわけでまた10万あるいは20万と上がっていきます。
 これで40万〜70万です。
 その上で、サーバーOSの価格など数万円づつの費用を積み重ねると
50万から80万程度になってしまいます。
 さて、よくこんな簡単なシステムなら100万位でさっとできないの?
 という最初の質問ですが、我々SI企業が何もしなくても既に50から80万程度はかかってしまう計算になります。
 そこから、システム開発費用がかかっていくのです。
 さて、こういった5-6万のPCだと「使い続けることができない」(停止の可能性やリスクが高い)ことを「可用性(英訳:Availability)が低い」といいます。
 「使い続けられる能力が低い」という意味です。
 SI企業が提案にきて「高いよ」といった時に「あべいらびりてぃが保てません」と言われたら今、私が上記にしたような話を思い出してください。
 「え?そんな100万、200万とかではなく、当たり前のように500万だ、1000万だって言われたよ?」という方には続いて「可用性:中級編」で説明します。
・・・ちなみにいつ書くかは全く不明です。期待しないでいてください。(笑)

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