2009/08/06

■ 「作品」に銘を入れたい
 たとえば、映画のように、エンターテイメント系のソフトですと、しばしば「スタッフスクロール」というのが出てきます。プログラミング誰々、プロデューサー誰々・・・果ては宣伝から営業まで。
 しかし、業務系のシステムやアプリケーションには殆ど、「スタッフスクロール」が出てきません。
 実は私はこれを非常にさびしく思っています。

 世間のみなさんにはわからないところで、よく業務系システムではプログラミングのヘッダーにAutherというのが書いてありますが、これは単に開発の際に問題や問い合わせのトラッキングに便利なように「どこどこ社の誰々が書きました」と書いてあるだけです。
 無論、ソースのヘッダーやフッターあるいは構成管理ツールの中にのみ残りますのでご利用されているいわゆる「世間一般」の方から見える事はありません。

 これにはいくつかの理由があり、最大の理由はセキュリティと著作権と言われています。
 たとえば預金システムの設計者が分かれば、その人を締め上げて、、、、という「可能性がある」と業界では言われてきました。
 実際に現在のシステム開発にかかわっている人々は知っていますが、そういう社会的にミッションクリティカルなシステムの場合、あまりに大き過ぎて、一人ひとりの技術者のかかわれる範囲は非常にせまく限定的です。その上、1個人が一言漏らしただけでセキュリティに懸念が生じるようなシステムは使い物にならない・・・ことは周知の事実です。

続く・・・


 ですので、おそらくこちらの方が大きいのですが、もうひとつは著作権の問題です。
 多くの受託開発システムはSI企業が開発し「納品」しています。ですので実際にソフトウェア全体の権利を持つ法人と原始的著作権を持つ個人の所属する組織は多くの場合は別物です。

 つまり「権利を所有している人」と「作った人」がまったく違うために、そういった情報を公開するという発想に向かわないことになります。
 食品流通商社のA社のメニューのシステムのスタッフスクロールボタンを押すとシステム開発会社B社の社員のみなさんの名前が出る・・・って変ですよね。それに意味もわかりません。

 ただ、私は以前から二つの観点でそれを「さびしい」と思っています。
 一つ目は「自分が生きて何かを生み出した証を残してほしいなあ」です。
 つまり、自分の生み出したものを後塵を拝する業界の人や自分の子孫に自慢してほしいなあと。「あれは俺が作ったんだ」と東京タワーを子どもと見あげるようなするような仕事をしてほしい・・・その分「作品」には心血を注いでほしいなあと。
 よくソフトウェア開発は建築にたとえられますが、建築ですと安藤忠夫さん・・・のように自分の仕事を残すことができます。しかし、ソフトウェアでは、まだまだそれがかないません。

 もうひとつは「自分の仕事に責任を持つ」ためです。たとえば自分の銘が入った刀剣を打つ刀匠が自分の名前を入れるにふさわしい品質を求め続けるように。「6カ月間の契約を頂いたので6カ月間で単なるやっつけでやりました。」「給料もらっているで作りました。」ではない「俺(私)の打ったこの一本をみよ!」位の気概で作ってほしいなあと。

 正直、弊社ではないですが、本当に業界には、悪い意味で自ら「製造機械」になり下がっている開発者が非常に多いのです。「6か月分の料金を投入口に入れたので6カ月間動作します。」というような。
 もし品質が悪くアウトプットを責められると「機械は正常に動いています。あなたが押すボタンを間違えたのです」と堂々と言います。

 実は私が「スタッフスクロールを入れたい」と言うと、いわゆる「業界プログラマー」の60%位の人は反対します。
 その理由は「こんなシステムに自分の名前が残るなんて耐えられない」が一番多いのに唖然とします。
 したり顔でITのプロフェッショナルを名乗り、高い金額を要求し、契約を締結しながら、今自分がしている仕事には「ひとかけらの愛情もない。今はくだらない仕事をしている。」と胸を張って当たり前のように堂々といいます。「仕事はやりますよ契約ですから」というのはプロフェッショナルの姿に一致しないと思うのですが。
 陶工や刀匠のようにとは言いませんが、自分の人生や時間を使って生み出す物には愛情を持ってほしいなあと。縁もゆかりもない後世の人に「いい仕事してますねえ」としみじみ言われたいじゃないですか。

 もっともこんなもの俺の仕事じゃない!って稼働前に成果物を消されても困りますが(笑)

 弊社は幸いに完全自社パッケージを所有しているので機能投資のすきを見て、開発要望に「スタッフスクロール」を入れるつもりです。

 ただし、断っておかねばならないのは、刀匠や陶工よりもシステム開発はかなりにチーム・・・共同の作業になります。ですので、ある一人の銘を刻むというよりはチームやチームのメンバーとして刻む感じかなあと思っています。


posted at 16:35:32 on 2009/08/06 by sato - Category: ソフトウェア産業全般(開発者向け)

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